糖尿病と肥満
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「最近太り気味になってきました。毎年の定期健診が恐いです。やはり肥満は糖尿病になりやすいのでしょうか。」
糖尿病は肥満、高血圧などと共に現代の飽食な食習慣などによってもたらされた生活習慣病です。厚生労働省の2002年度の糖尿病実態調査によると糖尿病が強く疑われる人と糖尿病の可能性を否定できない人の合計は1,620万人にもおよびます。
糖尿病とはインスリンの分泌やその働きの欠陥によって生じる高血糖値状態に陥る代謝疾患のことです。
過食や運動不足などによってエネルギー源であるグルコース(ブドウ糖)が血中に高濃度で存在し始めると、グルコースを細胞内に取り込むためにすい臓からイ塔Xリンが過剰に分泌され血糖値を調整します。しかし、この状態が長期に渡って続くとインスリンの分泌量や機能の低下が起こり、グルコースの細胞への取り込み能力が劣り、血糖値の高い状態が続き糖尿病となります。
血糖値とは血液中のグルコースの濃度を表す数値のことをいいます。正常者の空腹時の血糖値は110mg/dl未満で、糖尿病型は126mg/dl以上とされています。
血糖は食事の影響を受けやすく、正常者でも食事直後は急激に上昇しますが、その後時間を追うごとに正常値に近づき2時間も経てば元に戻ります。しかし、糖尿病型は2時間後も高血糖の状態が続きます。このような食事による血糖値の変動をグルコース負荷テストによって調べることができます。
グルコース(ブドウ糖)負荷テストとは、一晩の絶食後、75gのブドウ糖を摂取し、摂取前、30分後、60分後、120分後にそれぞれ血糖値を測定します。その他に尿糖値やインスリン値も測定します。負荷テスト120分後の血糖値が140mg/dl未満は正常型、200mg/dl以上は糖尿病型となります。これらの値の中間に属するものは境界型、つまり糖尿病予備群です。
糖尿病は基本的に2種類-インスリン依存性糖尿病(Type I)とインスリン非依存性糖尿病(Type II)-に区分されます。
インスリン依存性糖尿病(Type I)−遺伝的な要因などによって、すい臓からのインスリン分泌機能に障害がありインスリンが分泌されません。そのためインスリンの投与が必要とされています。
インスリン非依存性糖尿病(Type II)−生活習慣などによって、インスリン感受性に掛かり合う情報伝達系の機能に障害があります。インスリンは分泌されますが、グルコースの細胞内への取り込み能力(インスリン感受性)が低い症状をもっています。具体的にインスリン感受性とは、細胞膜にあるインスリン受容体とインスリンの結合によって、細胞内の情報伝達系が活性され、GLUT4などグルコース・トランスポーターの細胞内から細胞膜への移動(トランスロケーション)を働きかけ、グルコースを細胞内に取り込む一連の過程のことを指します。
糖尿病は肥満や過食と密接な関係があります。
遺伝子レベルの研究でも過食が血糖値をコントロールするインスリンに影響を及ぼしていることがわかってきました。SREBP-1cという物質は過食によって増加しコレステロールや中性脂肪を増やし、同時に、肝臓でのインスリンの働きを妨げて血糖値を上げています(Ide et al. 2004)。逆に食事制限をするとこの物質は減少して、インスリンによって肝臓から血中に糖が放出されるのが抑制されました。つまり、食べ過ぎは肥満を促すだけでなく、糖尿病を直接引き起こす原因にもなっています。
また、出生後1年ぐらいまで母乳以外に過度に食物の摂取を促し成長が早すぎると、7歳の幼児期までに肥満になりやすい要因が増加することも最近の研究で明らかになっています(Stettler et al 2002)。赤ちゃんの時に既に糖尿病予備軍が生まれている可能性があるわけです。
また、脂肪細胞から血糖をさげるインスリンの働きを阻害するレジスチンが分泌されています。肥満になり脂肪細胞が正常に働くなるとこのようなホルモンの分泌を活性化させ糖尿病を促していると考えられます。さらに、糖尿病患者(II型)はレジスチン遺伝子の働きが活性化されており、この多くはDNAの塩基配列が1カ所だけシトシンからグアニンに変異した1塩基多型(SNP)に起因していることもわかってきました(Osawa et al. 2004)。このことは個人ごとの予防や治療法を考えなくてならないことを示唆しています。
個人差はありますが、食べすぎ、肥満は糖尿病や他の生活習慣病を引き起こしていますので健康の面からも十分に気をつけていかなければなりません。ただのデブという一言で片付けることの出来ない問題です。
もう一度食習慣、生活習慣を見直してみてはいかがでしょうか。
山内潤一郎
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