パワー発揮と体温
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「筋肉を温めたり冷やしたりすることは走るスピードなどの運動パフォーマンスに影響を与えますか?」
走るスピードやパンチのスピードなどのヒトの動きの速さは様々な要因によって決められています。
動き自体は筋肉が収縮することによってはじめて関節間の骨が動き、動作となります。したがって、動きの本質は筋線維そのものの性質で決められています。
運動パフォーマンスで必要とされるパワーも筋の収縮装置の能力に大きく依存しています。筋の収縮能力は力-速度関係で説明することが出来、パワーは筋の力と速度の両方の能力で決定しています。
また、筋機能は様々な外的な要因によって影響されています。温度もその一つです。
筋の最大筋力と最大短縮速度のレベルは温度によって変わります。ヒト外側広筋の筋線維をバイオプシで摘出し、温度の違いによる筋機能への影響を分析した研究があります(Bottinelli et al. 1996)。この結果によると、最大筋力と無負荷最大短縮速度の値は温度に依存して変化します。
最大筋力は温度が12度から17度へ上昇することで2倍になりましたが、サの後17度から22度の上昇ではほとんど変化しませんでした。
一方、無負荷最大短縮速度は温度が12度から17度へ上昇することで2.5倍、12度から22度の上昇ではおよそ6倍近く速くなっています。
この温度による力と速度の変化は各筋線維でバラつきがあり、遅筋線維の方が速筋線維よりも敏感に反応しやすいようです。
したがって、力と速度の積で現されるパワーへの温度の影響は大きいといえます。
この実験では筋線維を化学薬品の処理によって筋細胞膜や筋小胞体などを取り除いたスキンファイバーの状態で行っています。したがって、この結果が直接ヒト生体内の反応に結びつくとはいえないかもしれません。また、実験で使用した温度はヒトの体温とかけ離れています。
しかし、筋肉の収縮能力が温度に敏感に反応して変化するという事実は実際のヒトの運動パフォーマンスを最適にするために大切な情報になります。
体が冷えていると筋肉の収縮能力が落ちてパワー発揮能力は低下してしまいます。
したがって、ウォーミングアップで体を温めることはパワー発揮能力を高めるためにも重要なのです。実際にウォームアップなしでの最大パワーの測定はウォームアップありに比べて低くなっています(Wit et al. 1987)。
ウォーミングアップをしっかりしないで体が温まっていないとケガをするだけでなく、最適なパフォーマンスも発揮できません。
山内潤一郎
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