レジスタンスエクササイズの動作スピード
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「筋力トレーニングで早くやるのと遅くやるのとどっちが効果ありますか?」
目的にもよりますが、実践的な動きの中で最大パワーの発揮能力の向上させたいのならば、どちらかと言えば、速く爆発的な動作でする筋力トレーニングの方が効果はあります。
筋本来の特性から考えると、軽いものは速くあげて、重いものは遅いけれど力強く爆発的に上げた方が適切な刺激がいきます。
この性質に逆らうことなく自然な動作で筋力トレーニングを実施した方がより日常動作やスポーツ動作に近い筋機能の向上を達成することが出来ます。
速く走るためにはパワーをつけなければなりません。そして、パワーを向上させるためには筋力を増大させる必要があります。しかし、各競技で要求されるパワー能力向上のためには筋力の増大は動作に特異的であり、なおかつ瞬時に筋肉が収縮される能力を伴っていなければなりません。
もしレジスタンストレーニングを遅い動作で実施し続けたならば、ある程度の筋力がつき強くなるかもしれませんが、爆発的に筋力を発揮するためのパワー能力の向上は期待することができません。
HakkinenとKomi(1983)が高強度の短縮性と伸張性活動の両方のコンビネーションによるレジスタンストレーニングと伸張性活動のみのレジスタンストレーニングを16週間実施し、その効果を検証しています。短縮性と伸張性活動の両方のコンビネーションによるレジスタンストレーニングは最大筋力と垂直跳び時に要求される力の瞬時な立ち上がり能力を向上させました。この力の瞬時な立ち上がり能力の向上はFTタイプ運動単位の活性増加と速筋線維の割合と大きさの増加に起因していると考えられます。
一方、高強度の伸張性活動のレジスタンストレーニングを長期間実施した結果、等尺性最大筋力発揮時と垂直跳び時に要求される力の瞬時な立ち上がり能力は逆に低下してしまいました。
反動動作のジャンプでは速い速度での筋肉の伸張後のきりかえし要求されます。しかし、伸張性活動のトレーニングでは比較的ゆっくりと筋肉を引き伸ばした動作でトレーニングをしているためにジャンプパフォーマンスに要求される特異的な筋力トレーニング効果を促しているとは考えにくいのです。むしろ、伸張性活動のみの筋力トレーニングではジャンプなどの動作に必要とされる弾性エネルギーの利用と貯蓄の促進に弊害をもたらしている可能性があります。
伸張性活動の筋力トレーニングでも動作速度の違いによって効果が変わってきます。
Shepstone et al.(2005)は肘屈曲の等速性伸張性活動の筋力トレーニングで動作速度の違いによる効果を検討しています。速い速度(3.66 rad/s)で伸張性活動トレーニングを実施した方が遅いャ度(0.35 rad/s)に比べて8週間後の筋力と筋肥大の向上は大きくなりました。また、速い速度の伸張性活動は筋の微細構造に大きな破裂を引き起こしており、これは早期のタンパク質の再構築を促し、タンパク質の合成期間を長くしていることを示唆しています。したがって、速い速度で実施する伸張性トレーニングの方がタンパク質の合成を高め、その結果筋肥大をより促進していると考えられます。
収縮スピードや収縮タイプに依存した動作特異的な筋力トレーニング方法が重要なことがここでもわかります。
筋力をつけたり、筋肉を大きくするためには動的な動作での筋力トレーニングでは重い負荷で爆発的にするか、軽い負荷で高速でするべきなのです。
しかし、スロートレーニングがダメだといっている訳ではありません。むしろ、場合によっては効果的です。
学術的にスロートレーニングとして提唱されている動作スピードは10秒の短縮動作(concentric movement)と4秒の伸張動作(eccentric movement)です。これはかなりきついです。
Westcottら(2001)はトレーニング経験のない中高齢者にこのスロートレーニング(4-6回/セット)と動作スピードが2秒の短縮動作、1秒の停止、4秒の伸張動作で実施する一般的なレジスタンストレーニング(8-12回/セット)を比較しました。その結果、両グループとも筋力が増加しましたが、スロートレーニングのグループの方がその効果が大きかったと報告しています。
したがって、筋力の低下している高齢者のエクササイズやケガ後のリハビリテーションで筋肉に過度のメカニカルストレスを加えずに筋力を強化するためには有効だといえます。
筋肉はとりあえず動かしてあげないと退化してしまいますので、筋力が弱っている人も筋肉を無理のない程度に動かしてあげることが大切です。
何でもない動作でも極端にゆっくりと動かすことによって筋内に普段と違った刺激を与え、その結果筋肉の代謝環境に変化を与え活性を高めてくれます。中国の太極拳はそのいい例かもしれません。
実際に一般の人がスポーツ選手のように特別なパワーを普段から要求されている訳ではないので、特別に重い負荷や速いスピードで身を削って筋力トレーニングすることもありません。
時と場合に応じて、より適切なトレーニング効果を得るためにエクササイズの動作スピードを調整することは大切なことです。
しかし、アスリートのような特別な人を除いて、一般人は各個人のペースで普通に呼吸をしながらエクササイズをするのが安全でいいのかもしれません。
で、たまに縄跳びでもするかのようにその場で飛び跳ねることを繰り返す運動をするだけでもより機能的な筋肉を強化することが出来ます。
山内潤一郎
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