加齢に伴う筋力、パワーの低下
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「定年してから今までなんてことなかった段差でつまづくようになりました。なんで年を取るとちょっとしたことで転びやすくなるのですか。」
加齢に伴う筋力の低下が主な原因です。特に筋神経系能力に起因するパワー、つまり力を速く発揮する能力の大きな低下にあるといえます。
ヒトの筋力とパワーの発達と低下は成長や加齢の過程と共に変化しています。
一般的に人の筋力は男女ともに20代から30代の間にピークに達するといわれています。
その後は年をとるとともに筋力は下降線をたどり、60-65歳あるいはそれよりも早い時期に急に筋力の低下が始まります。
筋力の低下は筋収縮タイプ、筋線維タイプ、性別に多少異なっています。
男女ともに短縮性筋力(concentric strength)の方が伸張性筋力(eccentric strength)よりも早く衰え始めるようです。伸張性筋力とは筋肉が引き伸ばされながら発揮する筋力のことです。いわゆる耐える筋力の方が年を取っても必要性が要求されているのかもしれません。この伸張性筋力はおもしろいことに男性の方が女性より早く衰えはじめているようです(Lindle et al. 1997)。
また、加齢に伴って筋肉は筋繊維タイプ別に選択的に萎縮していきます。速筋タイプ(fast twitch type:FT)の筋肉の萎縮が遅筋タイプ(slow twitch type: ST)に比べて大きいと報告されています(Hakkinen et al. 1995, 1997)。運動単位(motor unit)の数も加齢に伴って同様にタイプ別の減少がみられます。したがって、加齢に伴うパワーの低下はFTタイプの筋繊維の萎縮と運動単位数の活動低下に起因しているといえます。
これらの能力は、歩行や階段の昇り降り、物を持ち上げるのに必要なだけでなく、特に転倒しそうなった際にすばやく立ち直るための動作などで大切な役割をしています。
転倒事故は高齢者の間で最も深刻な問題です。これが原因で寝たきりになってしまい、早期の死につながっていることもあります。
山内潤一郎
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