癌とアポトーシス
|
|
「知人が癌の治療に放射線治療することになりましたが、副作用を心配していました。最近の癌治療の研究はどの程度進んでいるのでしょうか。治療後、早く健康になるためにはどうしたらいいのでしょうか。」
癌に関する専門家ではないので詳しいことはわかりません。
基本的なことですが、自分が知っている範囲でお答えします。
癌は未だに治療法が確立されていない病気です。
癌化した細胞は特殊で本来死んでなくなるべき病んだ細胞が増殖しつづける厄介な病気です。放っておくとどんどん増殖して体中に転移をして取り返しのつかないことになります。したがって、早期の発見と治療が重要になってきます。
生体内の制御機構の一つに、不要になった細胞、古くなった細胞、異常の起きた細胞を自発的な細胞死によって取り除き、生命体を健康な状態に維持する働きがあります。この遺伝的に制御された細胞死をアポトーシス(apoptosis)といいます。
癌ではこのアポトーシスの抑制によって有害に変異した細胞が除去されずに増殖が促進されています。
したがって、アポトーシス誘導のメカニズムが解明されれば、癌細胞だけを特異的にアポトーシスを誘発させることが出来るようになり、特異的な治療法や薬を開発することができると考えられます。
最近では遺伝子レベルのアポトーシスのシグナル伝達機構が少しずつですが明らかになってきています。
放射線治療などによる癌の治療はDNAを損傷させてアポトーシスを誘導させる遺伝子を活性化させて癌細胞を死なせていると考えられています。しかし、この時正常な細胞のDNAも損傷させてしまい、様々な副作用が生じているとも考えられています。
また、腫細胞の増殖を高める酵素(例えば、farnesyltransferase)をブロックする薬なども開発されているようです。
一方、加齢による筋力低下はこの逆で必要以上に筋細胞が死んでしまい、細胞の増殖が追いつかなくなっているのが主な原因です。過度のアポトーシスもやはり問題なのです。
癌細胞を死滅させようとしてアポトーシスを誘発させると、どうしても他の正常な細胞の死滅も引き起こしてしまい体力の低下も同時に引き起こしていると考えられます。
だからといって、癌の治療を止めるわけにはいきません。
まず、放射線治療や抗癌剤の投与とともに体力の低下が激しく起こらないためにも栄養には気をつけなければなりません。食欲や消化能力の低下で通常通りに栄養を補給することは難しいかもしれません。そこで、簡易に栄養補給が可能なサプリメントなんかも利用してみるといいかもしれません。
体力の低下の主な原因は筋力低下です。筋肉は動かさないとすぐに萎縮してしまいます。しかし、自発的でなくても筋肉を収縮させることによって筋萎縮を防ぐことができます。急激な体力の低下を防ぐためにも負担にならない程度に筋肉を動かしてあげることは大切です。
病気だからといって寝たきりにさせてしまうのではなく、少しでも身体を動かすようにしてあげた方が場合によってはいいのです。自発的に身体を動かすことはもちろんのこと、人の力を借りたりや市販されている簡易な電気刺激装置を使って受動的に動かすことも出来ます。
癌は命に関わる病気です。ひとり勝手に無理をせず、各方面の専門医から慎重に話を聞き適切に対処していかなければなりません。
山内潤一郎
|